2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になります。改正労働施策総合推進法によるもので、施行まであと1か月です。
「うちは小さい事業所だから関係ない」と思われるかもしれませんが、労働者を1人でも雇っていれば、業種も規模も問わず対象です。訪問介護事業所は基本的に全部が当てはまります。
そして訪問介護は、カスハラが起きやすい構造を持った仕事です。この記事では、今から何をしておけばいいかを整理します。
何が義務になるのか
事業主に求められるのは、大きく3つです。
| やること | |
|---|---|
| ①方針の明確化と周知 | カスハラに対する事業所の方針を決めて、ヘルパー全員に周知する |
| ②相談体制の整備 | 相談窓口を設け、相談に対応できる体制を作る |
| ③発生後の適切な対応 | 事実確認、被害を受けた職員への配慮、再発防止 |
あわせて、相談者のプライバシー保護と、相談したことを理由に不利益な扱いをしないことも求められます。
相談窓口は、すでにパワハラ・セクハラの窓口があるなら一体で運用してかまいません。ゼロから別に作る必要はありません。
※詳細な指針は今後示される部分もあります。最終的な内容は必ず厚生労働省の公表資料でご確認ください。
訪問介護でカスハラが起きやすい3つの理由
①密室で1対1になる
施設と違い、周りに同僚がいません。何が起きても目撃者がいない状況で働いています。
②相手の生活空間に入る
ヘルパーは「お客様の家にお邪魔している側」です。この立場の非対称が、断りにくさを生みます。
③サービスの範囲が曖昧に見える
利用者・家族から見ると「掃除に来ているのだから、ついでにこれも」と映ります。制度上できないことでも、断ると人格を否定されたように受け取られることがあります。
だからこそ、個人の対応力に任せてはいけない領域です。ここを仕組みにするのが今回の義務化の趣旨だと考えています。
今からやる3つ
①「これはカスハラです」を定義して文書にする
言葉にしないと、ヘルパーは我慢します。次のような行為を具体的に列挙してください。
- 暴力、物を投げる、道具を壊す
- 人格を否定する言葉、大声で長時間責める
- 身体を触る、性的な発言、必要のない露出
- サービス範囲外の要求を、断っても繰り返す
- 正当な理由のない訪問時間の変更要求の繰り返し
②相談窓口と「その場でどうするか」を決める
相談窓口だけでは足りません。訪問中に起きたとき、その場でどうするかを決めておいてください。
身の危険を感じたら、サービスを中断して退出してよい。退出後すぐにサービス提供責任者へ連絡する。判断はヘルパーを責めない。
この一文があるかどうかで、現場の動き方がまったく変わります。「勝手に帰った」と後から言われない状態を先に作ってください。
③重要事項説明書と契約書に書いておく
利用開始のときに、事業所として何を受け入れられないかを伝えておきます。起きてから伝えるのは、はるかに難しいです。
それでも起きたときの順番
- その場を離れる … 身体的な危険があるときは説得より退出
- サ責・管理者へ報告 … ヘルパーに判断させない
- 事実を記録する … いつ、どこで、誰が、何を言われたか。評価や感情は分けて書く
- ケアマネジャーへ共有 … 事業所だけで抱えない。担当者会議の議題にする
- 担当の変更・複数訪問・契約の見直しを検討 … 選択肢を事業所として持っておく
2番目が最も重要です。ヘルパーが「これくらいで言ったら大げさかな」と黙る事業所は、いずれ人が辞めます。報告のハードルを下げるのは管理側の仕事です。
よくある質問
Q. 認知症による言動もカスハラですか
病気による症状と、意図的な加害行為は分けて考える必要があります。ただし職員が受ける負担は同じです。原因が病気であっても、複数訪問や担当交代といった配慮は必要になります。
Q. 契約を解除できますか
訪問介護には正当な理由のないサービス提供拒否の禁止がありますが、職員の安全が確保できない場合は正当な理由になり得ます。ただし単独で判断せず、ケアマネジャー・自治体と相談してください。
Q. 小さな事業所でも本当に対象ですか
対象です。労働者を雇っていれば規模を問いません。個人事業主であっても、人を雇っていれば事業主としての義務が生じます。
まとめ
- カスハラ対策の義務化は2026年10月1日。労働者を雇う全事業主が対象
- 義務は方針の明確化・相談体制・発生後の対応の3つ
- 訪問介護は密室・1対1・生活空間という構造上、起きやすい
- 「危険を感じたら中断して退出してよい」を文書にしておく
- 起きたら離れる→報告→記録→ケアマネ共有の順。ヘルパーに判断させない
PR
カスハラへの向き合い方は、事業所によって本当に差があります。相談したときに事業所が動いてくれるか、担当を替えてもらえるか。ここは求人票には書かれていません。転職サイトの担当者経由なら、応募前に事業所ごとの体制を確認してもらえます。いま我慢して働いている方は、それが普通ではないと知るところからでも遅くありません。
介護職の求人・転職なら【介護JJ】
![]()
コメント
コメントを投稿