訪問先の玄関を開けたら、利用者さんが床に倒れている——訪問介護でいちばん怖い場面です。
このとき何を先にやるかが決まっていないと、頭が真っ白になります。この記事では、行動の順番とやってはいけないことを、そのまま覚えられる形でまとめます。
覚えるのは順番だけです
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 周囲の安全を確認する(ガス、水、電気、転倒物) |
| 2 | 声をかけて反応を見る(肩を軽くたたきながら) |
| 3 | 反応がなければ119番 |
| 4 | 呼吸を確認する |
| 5 | 呼吸がなければ胸骨圧迫(通信指令員の指示に従う) |
| 6 | 事業所へ連絡 |
| 7 | ご家族・ケアマネジャーへ連絡(事業所と分担) |
3番を迷わないでください。「事業所に確認してから」と考えているうちに時間が過ぎます。119番が先、事業所は後です。
119番でそのまま言えばいい言葉
電話がつながったら、聞かれる前にこの順で話してください。
- 「救急です」
- 住所(利用者宅の住所。訪問前にスマホで開いておく)
- 「訪問介護のヘルパーです。◯◯さん、◯歳、床に倒れています」
- 「呼びかけに反応がありません」/「反応はありますが◯◯です」
- 自分の携帯番号
2番でつまずく人が多いです。他人の家の住所は、とっさに出てきません。訪問前にスマホの地図で開いておくか、記録用紙に住所を書いておいてください。これだけで数十秒変わります。
そして電話を切らないでください。通信指令員が、胸骨圧迫のやり方まで口頭で教えてくれます。1人でも、指示に従えばできます。
やってはいけない5つ
- むやみに動かす … 頭を打っている可能性があります。安全確保のためでなければ動かさない
- ベッドに戻そうとする … 1人で持ち上げようとして、二次事故が起きます
- 水や薬を飲ませる … 意識がはっきりしない方に飲ませると誤嚥します
- 「大丈夫ですか」で終わらせて帰る … 本人が「大丈夫」と言っても、記録と報告は必要です
- 自分だけで判断して救急車を呼ばない
2番が本当に多いです。「床に寝かせておくのはかわいそう」と思ってしまうのですが、骨折していたら悪化します。毛布をかけて保温するまでにしてください。
意識がある場合
反応がある場合も、判断は同じです。迷ったら救急要請。
| こうなら救急 | 理由 |
|---|---|
| 頭を打った可能性がある | 時間が経ってから症状が出ることがあります |
| 立てない・強い痛みがある | 骨折の可能性 |
| 受け答えがいつもと違う | 脳血管障害の可能性 |
| 呂律が回らない、顔や手足の左右差 | 同上。時間が勝負です |
| 抗凝固薬を飲んでいる方が転倒した | 出血が止まりにくい |
本人が「大丈夫、呼ばないで」と言うこともあります。それでも事業所へ連絡し、判断を仰いでください。1人で「大丈夫」と決めないことです。
訪問前にやっておくこと
- 利用者宅の住所を、すぐ出せる状態にしておく
- 緊急連絡先(家族・ケアマネ・事業所)を持ち歩く
- かかりつけ医と持病、服薬を把握しておく
- 玄関の鍵の扱いを確認(キーボックスの場所、開かないときの手順)
- 救急隊に渡せる情報がどこにあるか(お薬手帳、緊急医療情報キットなど)
5番目を知っておくと現場が早いです。冷蔵庫に情報キットを置いている自治体があります。担当の利用者さんの家にあるかどうか、事前に確認しておいてください。
玄関が開かないとき
呼んでも返事がなく、鍵も開かない——これも判断に迷う場面です。
- 窓や別の出入口から声をかける・様子を見る
- すぐに事業所へ連絡
- ご家族・ケアマネジャーへ連絡(事業所と分担)
- 中で倒れている可能性が高いと判断されるときは、119番
勝手に鍵を壊して入らないでください。その判断はヘルパー個人がするものではありません。事業所として、鍵が開かないときの手順を決めておく必要があります。
その後にやること
- 救急車に同乗するかどうか … 事業所の判断を仰ぐ。次の訪問の調整が必要になります
- 搬送先を確認して事業所へ伝える
- 記録を書く … 時刻を必ず入れる。発見時刻、119番した時刻、救急隊到着時刻
- ケアマネジャーへ報告
- 事故報告が必要かを事業所に確認する … 市町村への報告義務がある場合があります
3番の時刻がいちばん大事です。あとから思い出せません。落ち着いたらすぐ、スマホにメモしてください。
よくある質問
Q. 胸骨圧迫は資格がなくてもやっていいですか
できます。救命のための行為は、資格を問わず行えます。通信指令員の指示に従ってください。やらないことのほうがリスクです。
Q. 自分の判断で救急車を呼んで、軽症だったら怒られませんか
呼ばずに手遅れになるほうが、はるかに重大です。迷ったら呼ぶ。それを支持しない事業所であれば、そちらに問題があります。
Q. 訓練を受けたことがありません
消防署が救命講習を実施しています。事業所として受講の機会があるかを確認してください。1度でも実際に手を動かしておくと、本番の動きが違います。
Q. 発見してしまったことがつらいです
それは当然の反応です。1人で抱えないでください。事業所に振り返りの場があるか、管理者に相談できるかが、続けられるかどうかを分けます。
まとめ
- 順番は安全確認 → 声かけ → 119番 → 呼吸確認 → 胸骨圧迫 → 事業所連絡
- 119番が先、事業所は後
- 住所がとっさに出ない。訪問前に開いておく
- 電話を切らない。通信指令員が手順を教えてくれます
- やってはいけないのはむやみに動かす・持ち上げる・飲ませる・そのまま帰る
- 意識があっても頭を打った・立てない・受け答えが違うなら救急要請
- 記録には時刻を必ず入れる
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緊急時に動けるかどうかは、本人の度胸ではなく事業所の準備で決まります。緊急連絡先が一枚にまとまっているか、鍵が開かないときの手順が決まっているか、救命講習の機会があるか——ここが整っている事業所では、新人でも迷わず動けます。求人票からは読み取れない部分なので、「利用者さんが倒れていたとき、どういう手順になっていますか」を面談で確認してもらうと、その事業所の備えがよく見えます。
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