「時給1,800円」の求人に応募したのに、実際の手取りが思ったより少ない。訪問介護でよくある話です。
理由の多くは移動時間・待機時間・記録の時間にあります。この記事では、どこまでが労働時間なのかを国の通達に沿って整理し、面接で確認する3つをまとめます。
結論:条件を満たせば労働時間です
根拠は厚生労働省の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(基発第0827001号)です。ここに移動時間・待機時間の扱いが明記されています。
| 時間の種類 | 労働時間になる条件 |
|---|---|
| 移動時間 | 使用者が業務に従事するために必要な移動を命じ、その時間の自由利用が労働者に保障されていない場合 |
| 待機時間 | 使用者が急な需要等に対応するため待機を命じ、その時間の自由利用が保障されていない場合 |
| 業務報告書等の作成時間 | 業務上義務付けられており、使用者の指揮監督に基づいて事業場や利用者宅等で作成している場合 |
| 研修時間 | 使用者の明示的な指示に基づく場合、または実質的に出席の強制があると認められる場合 |
通達では、事業所から利用者宅への移動や利用者宅から次の利用者宅への移動で、その時間が通常の移動に要する時間程度であれば労働時間にあたる、と示されています。
ポイントは「自由に使えるか」
判断の軸は1つだけです。その時間を自分の好きに使えるか。
| 状況 | 扱い |
|---|---|
| 9時の訪問が終わり、10時の訪問先へ直行するよう指示されている | 労働時間 |
| 9時終了、次は14時。間は自由。連絡待ちもなし | 労働時間にあたりません |
| 訪問と訪問の間、事業所で待機を命じられている | 労働時間 |
| 自宅から最初の訪問先へ向かう(通勤) | 通勤時間。労働時間にあたりません |
「拘束されているか」で見てください。次の訪問まで4時間空いていて、その間まったく自由なら労働時間にはなりません。逆に、30分空いていて事業所で待たされているなら労働時間です。
記録を書く時間も対象になり得ます
ここは見落とされがちです。業務上義務付けられた記録を、指揮監督のもとで作成しているなら労働時間です。
問題になりやすいのは自宅に持ち帰って書いているケースです。「自宅だから」という理由だけで労働時間から外れるわけではありません。実質的に書かなければならない状態なら、扱いを事業所に確認してください。
研修も同じです。「参加は自由です」と言いながら、実際には全員参加が前提——この状態は「実質的に出席の強制がある」と評価され得ます。
賃金の払われ方は3タイプ
| タイプ | 中身 | 見るべき点 |
|---|---|---|
| 移動時間にも時給 | 訪問時給と別の単価(低め)で支払う | 単価がいくらか。最低賃金を下回っていないか |
| 移動手当(定額) | 1件あたり◯円、1日◯円 | 実際の移動時間に見合っているか |
| 訪問時給に含む | 「移動込みの時給です」という説明 | ここが最も曖昧になりやすい |
3つ目は要注意です。移動時間を含めて割り戻したときに最低賃金を下回っていないかを、必ず計算してください。訪問時給だけを見ると高く見えても、実働全体で割ると下がることがあります。
面接で確認する3つ
- 移動時間はどう支払われますか … 時給か、手当か、含みか。金額まで聞く
- 1日の訪問件数と、移動の総時間はどのくらいですか … 件数だけ聞いても実態は分かりません。移動を足した拘束時間で聞く
- 記録はいつ、どこで書いていますか … 「移動中に」「自宅で」という答えが返ってきたら、その時間の扱いを確認する
3つ目がその事業所の姿勢をいちばん表します。記録の時間を業務として見ている事業所は、他の部分もきちんとしていることが多いです。
登録ヘルパーの場合
登録ヘルパーは訪問した分だけという契約が多く、移動時間の扱いが曖昧になりやすい働き方です。
- キャンセルが出たときの扱い … 直前キャンセルで収入がゼロになる契約かどうか
- 移動距離と件数のバランス … 件数が多くても、遠方が混ざると実質時給が下がる
- 年次有給休暇 … 要件を満たせば、パート・登録でも付与されます
3つ目を知らない方が多いです。労働日数に応じて比例付与されます。「登録だからない」ということはありません。
よくある質問
Q. 通勤時間は労働時間ですか
自宅から最初の訪問先へ向かう時間は通勤にあたり、労働時間にはなりません。ただし、いったん事業所に寄ることが義務づけられている場合など、事情によって判断が変わることがあります。
Q. 移動時間の時給が訪問時給より低いのは違法ですか
移動時間に別の単価を設定すること自体は直ちに違法とはいえません。ただし最低賃金は下回れません。ここが線です。
Q. 事業所に言いにくいのですが
まずは就業規則と雇用契約書を確認してください。書面に書かれていることが出発点になります。そのうえで相談先が必要なら、労働基準監督署の総合労働相談コーナーがあります。
Q. 過去の分はさかのぼれますか
賃金請求権には時効があります。個別の事情で扱いが変わるため、労働基準監督署や専門家にご相談ください。この記事は一般的な整理であり、法的助言ではありません。
まとめ
- 根拠は基発第0827001号。移動時間・待機時間は自由利用が保障されていなければ労働時間
- 事業所→利用者宅、利用者宅→次の利用者宅の移動で通常必要な時間程度なら労働時間
- 業務上義務付けられた記録の作成時間も条件を満たせば労働時間
- 研修は実質的に強制があれば労働時間になり得る
- 「移動込みの時給」は割り戻して最低賃金を下回っていないかを確認する
- 面接では移動時間の支払い方・移動を含む拘束時間・記録を書く場所を聞く
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移動時間の扱いは事業所によってはっきり差が出るところですが、求人票を見ても分かりません。訪問件数だけ多くて移動が長い事業所と、エリアを固めて効率よく回している事業所では、同じ時給でも手取りが変わります。転職サイトの担当者は事業所ごとの実態を持っているので、「移動時間の支払い方」と「1日の拘束時間」を確認してもらうと、比較の精度が上がります。
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